中秋の名月-月餅の試作
そんなことをお話していこうと思います。
中秋の名月
2025年の中秋の名月は、10月6日の夜でした。この日の天気はあまりよろしくなく、日が沈んだ直後辺りは曇り空が立ち込めていて、今年は絶望的かな…と思っておりましたが、少し時間を空けてみると、雲の隙間から月が顔を見せるくらいには天気が回復し、無事拝むことができました。

スマホのカメラなので結構ぼやけてしまいましたが、雲の隙間から見えた月がおぼろだったのも相まって、どこかしらの刹那を感じました。ちなみに満月は翌日の10月7日なので、これは満月に限りなく近いけど満月ではないらしいです。
秋の空って夏の蒸し暑さが終わってどこか空気も涼しげかつ爽やかになる感じしますね。そんな空気の中でなら、外で月をじっと見ることも許される、そんな気がします。
月のクレーターがウサギに見えることと、古典でもある「因幡の白うさぎ」伝説とかから、月と言えばウサギってイメージありますね。実際、人間以外の地球生物は、月明かりをどのようにとらえているのでしょうか。感情、とはまた別の概念なのかもしれませんが、それに思いを馳せて見るのもまたこういった年中行事の醍醐味なのかもしれないな、とか思いながら月を眺めていました。
で、そんな中秋の名月、年中行事においては「中秋節」というようですね。日本のみならず東アジア広域での伝統的な習わしのようで、再会と収穫を祈願する行事、というのは概ねどの地域でも共通しているようです。
その中秋節において、月見団子と並んで伝統的な行事食とされている甘味が、「月餅」だそうです。
月餅、実はわたし、物自体は家族が好んで食べていたために知っていたのですが、行事食だということはつい最近知りました。ちょっと贅沢気分を味わいたいときにつまむ、程度の認識だったお菓子が、まさか伝統的な行事食、それも秋の代表的な行事中秋節のそれだったというのは、知った時にそれはもう驚いたものです。地域によっても種類やフレーバーが細部に至るまで異なるようで、時代と共に拡張を見せているんだとか。進化するお菓子、というのも実に面白いものですね。ちなみにうちの家族が好んでいたのは某中〇屋さんの小豆餡だったので、多分広州式の小豆餡でしょうか。
月餅をアレルゲンフリーで作ってみた
そして、ここからが本題。そんな月餅ですが、基本的に市販のものは鶏卵や乳が使われているものが多いため、ヴィーガンのわたしは動物性食材不使用のものを探す必要がありました。しかし、それもその辺にはまず売っておらず、インターネットで検索しても1件引っかかっただけでした。そこももう見つけたころには時すでに遅し。中秋の名月迄にはとても間に合いそうにありません。
買えぬなら 作ってしまえ ホトトギス
ということで、自分で作ることにしました。せっかくだからアレルゲンフリーで。
参考にしたレシピは、以下のサイトとなります。
上記レシピの原材料を、以下の通り置き換えて作りました。
- 卵40g→フラックスシード5gを水45mlで15分漬けたもの(フラックスエッグ)
- 上白糖50g→含蜜糖50g
- バター5g→ココナッツオイル5g
- はちみつ5g→メープルシロップ5g
- 薄力粉→米粉
- くるみ15g→ドライイチジク5g,松の実5g,オレンジピール5g
卵の代わりは、アレルゲンを考慮しないなら山芋が最適だったのですが、現在アレルギー表示における特定原材料に準ずるものの一つとなっているため、代わりのものを色々模索しておりました。そこでつなぎとして優秀なのが、フラックスシード(アマニ)やチアシードを水で溶かしたものだという情報を得たので、早速それを試してみようと思いました。ちなみにアクアファバ(ひよこ豆の煮汁)は、これらよりふわふわ感を出す、つまりは膨張剤としての卵の役割も担える優れモノなのですが、今回の月餅でふわふわ感はあまり求めていないので、フラックスシードを使うこととしました。チアシードと比較するとどうやらフラックスシードの方がつける時間が短く済むようなので、手軽に使えるとのことで、今回はこちらを試してみることとしました。
あとは基本的にレシピ通りに進めていきまして、完成したのがこちら。

見ての通り、月餅とは似ても似つかぬ扁平型の饅頭が出来上がりました。恐らく原因は、米粉オンリーで作った結果、色がつかなかったのが大きいのかなと思ったりもしました。あとはベーキングパウダーをもう少し増やさないと、縦へのふくらみが弱いかな、といったところですね。
一方で味はちゃんと月餅だったので、中秋の名月に捧げるお菓子としては十分なものではあったかな、と思います。つまりチョイスは悪くなかったので、あとは膨らみや焼き色、といった課題を突破すれば十分アレルゲンフリー月餅の実現は可能。そんな希望が持てる試みとなりました。
長年苦手だったこしあんと和解できた
そしてここからはちょっとした嬉しい棚ぼた。
今回の試作、レシピには完成品のこしあんが提示されていましたが、市販のこしあんで使われている砂糖は、精製糖の可能性があることを考慮すると、ヴィーガンとしては小豆から作る方がよりいいのではないか、と考えております。
しかしわたしは、餡子を手作りするのが非常に苦手で、過去に作った経験で言うと、春彼岸の牡丹餅のために作ったこしあんは思いっきり焦がしてしまいバットごとダメにしてしまい失敗。秋彼岸のおはぎのために作った粒あんに至ってはそもそもペースト部分が全くできず、ただのゆで小豆になってしまい失敗と、餡子には悉く返り討ちに合ってきたという苦い経験があります。
なので今回も正直不安が大きいところでした。逆を言えば、今日こそはアンコと和解してみせる!という風に自分を奮い立たせる契機にもなったわけですが。
そんなわけで今回こしあんを作るに至ったわけですが、今回はこちらのレシピを参考にさせていただきました。
かわしま屋さんのこしあんレシピ動画
例によって例のごとく砂糖は含蜜糖にしております。
以前の失敗から、ちゃんと生餡を作れるように、焦がさないようにゆっくりじっくりと作ることを心がけ、工程を進めていくことに。ゆでた餡を濾すところとか、上澄みを流す際に餡まで流さないように、とか。
そして完成した生餡がこちら。

動画のものよりも大分色素が薄めでしたが、何とか固形の生餡ができました!春彼岸の時はこの生餡自体がほとんど残らなかったので、これだけ残っただけでも希望が見えてきました。
そしてこちらの生餡と含蜜糖に火を入れ、練り上げたこしあんがこちら。

やった、やったよ・・・春彼岸の雪辱は果たした!!!
一人で勝手に盛り上がってしまってすみません。自分でもびっくりしたくらいに、しっかりとぽってりしたテクスチャーの、なめらかなこしあんができました!しかも含蜜糖で作っているので、小豆に元々豊富な食物繊維やミネラルに、含蜜糖に含まれるマグネシウムなどのミネラルも相まって、非常に栄養豊富かつしっとり甘いという素敵な逸品に仕上がりました!
餡子が安定して作れるようになった、というのは個人的に大きな成果です。これのおかげで、今まで避けて通っていた和菓子も色々と挑戦できるようになりますから。
以上。中秋の名月に月餅を作ってみた、というお話でした。今年は天気が悪くてあまり見られない地域もあったみたいですので、来年は綺麗に見られるといいなって思います。
